作者の思考

ヒスイ日和(霜月の壱)

2019年11月08日

最近は寒い日が続き、忍耐の冬が近づいているのを文字通り「肌」で感じます。
紅葉を楽しめる陽気が少なくて残念ですが、何よりも熊の多さが山から人を遠ざけています。
元々が人間以外の領域なので仕方ないかな…、でもますます幻想に閉じこもってしまうような気がして不安でもあります。(強さを失っていきそうだ)
「仮想(基本ゴミ箱)」「幻想(共同幻想)」「現実(自然領域)」、この違いとバランスを心がけたいと思います。

それでは11月初めの探石記録を書きます。

お気に入りの押上の海岸、この日は午前中は晴れでしたが午後から曇ってきました。(11/7)
晴れていた午前中に来たかったのですが仕事(加工)を優先し、午後1時頃からの探石でした。
車から降りてすぐに感じた強い風、これは「満足に探せないだろう」と思いました。





前回よりも激しく打ち寄せる波、まずは基本の「海水で濡れている部分」を確認して安全地帯を見定めます。(刻々と変わっていくので随時確認が必要です)
探せるのは右側の半分程度、普段は小石と砂が多い浜辺ですが、晩秋〜初冬にかけては大きめの石が集まります。(そして真冬には探せるどころの話ではなくなります(笑))




ギリギリ晴れ間が見られたのは幸いでしたが、何よりも強風が厄介、小1時間程度の探石でも3時間くらい必死で探したような疲労となり、波しぶきで目が霞み体感温度も急激に下がります。
正直に言って「楽しくない」、滝行クラスの修行をしているようで辛くなります(笑)
探石で最も辛い状況は、雨でもなく、雪でもなく、ただただ「強い風」だと解ります。(季節に関係なく最も厄介)
直立を維持する労力もそうですが、目をあいていられないのが致命的…、目は石を探す行為でも疲労するので余計に疲れるのでしょうね。(その前に加工で目を使っているので尚更なのでしょう)
年齢で差がありますが、やはり数倍は疲れるので探すなら短時間にしましょう。(危険も数倍になるし)
(そう言えば帰り際に大勢の小学生たちがバスで海岸に訪れましたが、あんな危険な状態の海では満足に野外学習は行われなかったかと思います。(最後まで見届けていないけど…))


そういった中で、どうにか見付かったのはネフライト1個、ロディン岩1個、流紋岩1個、玉髄1個、ヒスイ転石1個でした。


ネフライトとロディン岩は見本には良さそうかな?、持ち帰り吟味してみます。

流紋岩は…、ちょっと石英の斑点みたいなのが見られるけど石英斑岩と混ざっているのだろうか?、でも流紋岩の特徴の方が強いでの流紋岩で良いのでしょう。
サイズと紋様が良いので首飾りにしてみたいと思います。

小さな玉髄は磨いて見本やインテリアとして活用しようと思います。

小さなヒスイ転石は、一見ではヒスイに見えませんが、光に当てると細かい長方形の翡翠輝石がキラキラと輝きます。
小さいのでこれが無いとロディン岩なのか、曹長石なのか、珪石類(チャート等)の区別が難しくなりますが、今回のはハッキリと見えるので見本としても活用できそうです。

現地での判別が難しい場合は、とりあえず持ち帰って蛍光灯下で判別すると良いです。(それでも微妙な石だった場合は海に帰すのが良いかと)

首飾り用にサイズと紋様の良い石を重点的に探しましたが、いざ探してみるとなかなか見付かりません。
模様が良くてもサイズが合わず、首にかけたら首や肩が凝ってしまう石ばかかり…。
私としてはヒスイ以外の石は極力削る事なく最終的には海に帰せる仕様としたいのですが、それを優先すると難しくなります。
穴あけ程度は仕方ないのかな…、人が関わった痕跡を残すのも文化として面白いので後々には遺物として珍重されるかもしれません。(数千年後の話ですけど(笑))
それに穿孔しないと石をネットに包む方法が主となり、装飾品としては「光沢」や「紋様」を活かしきれない品となります。(自己満足であればネットから出して眺めれば良いけど…)

編み手の労力を無視すれば側面を編み上げる技術がありますが、厚みが一定でない自然石に適応すると「より手のかかる品」となり、コストパフォーマンスが悪くなります。(この手法は「編める側の人」の特権でしょうね)

しかし切断や研削をすると量産が可能となり有り難みが薄れますね…、そもそもに希少価値の低い石たちなので、やはり選別するなら「海岸転石の状態での優劣」を優先したいと思います。

ヒスイは「作り手の才能と魂の質量」で高め、ヒスイ以外の石は「自然が創った姿と素朴さ」で高めて行けたらと思っています。
これにより無駄な量産はなくなり、ヒスイ以外の石に限っては「海に帰せる」ってメリットもあるので理想的な気もします。(ヒスイの転石も海に帰せますけど)

ちなみに艶出しは海に帰せば自然研磨で人工的な光沢は失われるので大丈夫、平面に研磨しない限りは問題ないと思います。
また薬石などで作る湯飲みとかは別、道具として作る品は海に帰す事はありませんので「壊れるまで使い続ける」のが目的だと言えます。(用途が違う、ヒスイに限っては「お守り」なので一生持ち続けるのが普通)

装飾品は豊かさを担っていて、その中でも自然石を楽しむ方法は「素朴」であった方が良いと考えています。(でも雑貨レベルでは駄目)
「自然石の活用に人生を懸けてる」ってレベルの人なら作る品が別格なので、その場合は表現を優先しても良いと思っています。(乞食じゃ駄目、才能で証明できるレベルの人に限る)

まぁ、これは私自身の考えなので、「私のスタイルなのだ」と認識してもらえば良いです(笑)



話は変わり友人が持ち込んだヒスイの欠片から、ペンダント用のルースを制作しました。


紫ヒスイと翠ヒスイのペンダント、金枠はシルバーの既製品ですが「気軽に身に付けられるアクセサリー」として楽しんでほしいと思います。(当然ですが、糸魚川のヒスイなので(私が加工したので)お守りの要素を含んでいます)
親族に贈るとの事で、その人たちの好みは解りませんが、喜んでくれると嬉しいです。

友人は転勤で勤務先が遠くなり、探石は1ヶ月に1回程度になってしまったようですがヒスイ愛は変わる事なく、より一層強くなっているようです。
「そういった人たちが楽しめる場を創りたい」と思いながらも10年以上が経ってしまっていますが、いつかカタチにしたいと思っています。(人材の確保・資金の確保が非常に困難)

もっと知り合わなければならない人たちがいるのだろうなぁ…、「いつ」「どこで」が重要な気がしています。
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