作者の思考

底なる玉の加工

2013年09月07日

不思議な縁で知り合った青年の翡翠を、私が加工する事になりました。

彼が出会った「底なる玉」、それを母親へ贈るために勾玉に加工します。




なかなか良質の翡翠、そう簡単には出会えないレベルです。
しかし見たところヒビが多い感じ…、加工途中で割れないだろうか心配でした。
なるべく致命的なヒビを避けながら、それと同時に「美として映るヒビ」は残しながら加工をしました。

思ったよりも粘りがある翡翠で、しかも致命的とも思われたヒビは「石目」だったので、割れる事もなく無事に加工を終える事ができました。(主に切断の際に、粘りがある翡翠かが判断できます)



磨いた事により透明感を増し、美しい肌質や紋様が姿を現しました。
全体にうっすらと翠に染まる表側は無傷で、ブドウの果肉のような姿をしています。(とても美味しそうです(笑))

裏側には少しのヒビが残りましたが、雲のような、あるいは川の流を想わす紋様となり、所々に発色する明るい翠を引き立てていると思います。
持ち主の方には、この景色で姫川を感じてもらえたら嬉しいです。(秘めたる美「秘美」として見てもらえたら良いのですが…)


私的に、この「底なる玉」は加工して良かったと考えます。
理由に一つに「転石のままでの魅力は低かった」事があります。(綺麗な翡翠ではあったのですが、その姿形は魅力的ではなかったです)

翡翠の特徴的な姿である角張った状態、もう少し丸みがあったら良かったかな…、と思います。(でも翡翠輝石がキラキラしていて、美しかったのは確かです)

この姿で私と出会った(持ち込まれた)のも運命なので、内に秘めた美を引き出すよう私なりに造形しました。(青年の「思いやり」をイメージして加工しました)
後は青年と、その勾玉を贈られる母親に気に入ってもらえたら、作り手として最高です。


こういう青年が糸魚川にいるなんて「捨てたものでは無い」と思うのですが、結局は私と同じく糸魚川生まれでは無いんですよね…。(何より制作依頼の理由が一番気に入った)

それでも糸魚川へ移住してくれた事を嬉しく思います。
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