作者の思考

新作紹介(玉作工人)

2013年04月14日

大所川にて十数年前に採取した小さな転石から砥ぎだしました。
工程は平面出し、背砥ぎ、穿孔までは同じですが、この玉はえぐり形状が独特の為、荒研磨砥石を最初に成型し、その抉り形状を移す形で砥ぎ込んで行きます。



極めて緻密、堅牢なため攻玉には難儀しましたが、原石の中に潜んだ優美な形は表に出す事が出来たと思います。


砥石の一当たりひと当たりに心を込めて、内磨砥石を振り込み、持たれる方の護りとなるように祈りながら攻めました。
奴奈川の川面を渡る春風を感じていただければ幸甚です。


形状は古式奴奈川弥生末期の形で、頭に刻み込まれた三条の丁子、まさに大王の「威」を持った勾玉です。
透ける流水紋、そこに流れる一条の翠。
清流に春の訪れを告げる玉に仕上がりました。
完全な手研磨が生み出す光は上代玉作工人の真骨頂です。

玉作 工人   拝
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