作者の思考

奴奈川の勾玉

2015年03月20日

私が物産センターの加工所にいた頃からのお客さんに、勾玉の制作を依頼されました。(久しぶりで懐かしかったのと同時に、憶えていてくれた事に嬉しさも感じました)

もう何十年も昔の、父親の代から家に在ったヒスイのカケラだそうです。




見た限り青海系のヒスイで、かなりのヒビがあります。
石質は良く、緑も少し暗いですが全体に濃く入ってます。
裏側は緑が薄いですが、その分、ヒビが全くありません。
以前に友人が出会ったヒスイと良く似ていて、良質なヒスイである事がわかります。(色的にも、加工的にも良質)


そんな思い出の詰まったヒスイで、奴奈川の勾玉を作りました。
一部にヒビが少ない部分があったので、そこから制作しています。
ヒビを避けながら色を残していく、なかなか難しいですが、やり甲斐もあります。




暗く見えていた緑でしたが、磨きをかけた事で光を透し明るく輝きました。
なるべくヒビを避けたので少しスレンダーになりましたが、身に付ける事を考えると、この位が丁度良かったりします。
所々に流れる緑が美しく、雲のような模様も全体に見られます。







光を受ける事で、更に輝きを増します。
両面で違った生命色を見る事ができ、季節に合わせて見方を変えると面白いでしょう。
この景色を見る度に癒される、古代の人も同じ感動を楽しんだのでしょうね。(身分の高い古代人だけでしょうけど(笑))





今では出会う事が困難なレベルのヒスイですが、昔はどうだったのだろうか…?、と疑問に思う事があります。
現在までの加工での経験で見ると、このレベルを持っている(加工に持ってくる)年輩者も少ないので、昔でもそれ程多くは無かったのだと思います。(私の経験則です)

もしかしたら原石で売り払ってしまい糸魚川に無いのかもしれませんが、そう多く出ていないのは間違いないでしょう。
そんな貴重なヒスイを、私が加工できて良かったです(笑)

その方の親父さんは原石を集めるのが好きだったようですが、このプレートのままでは勿体ないとの事で、形見のヒスイを勾玉を制作する事を決めたようです。
父の思い出を勾玉に宿して身に付ける事で、その方のお守りとなるのだと感じました。

良い勾玉に仕上がりましたので、一族の護りとして繋がっていく事を願っています。
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