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作者の思考
ヒスイ日和(神無月の壱)
2020年10月17日
今回は、先日にオーダーを受けた品の紹介をします。

9月後半の連休にタイピンの制作依頼を受けました。
依頼人の方は、どこに頼めば良いのか分からず探していたようで、ちょうど物産センターにいた私に尋ねてきました。
確かに今の糸魚川にはオーダーを受けられる業者は少ない(ほぼいない)ので、探しようがないのも無理はありません…。

私も「受けられる」ってだけで得意という訳ではなく、リスクを考えるとあまり受けたくない仕事ではあります。
それでも、わざわざ遠方から訪れて来てくれたので、どうにか対応できないか考えました。(受けるに値する金額だった事も大きい)
依頼品は「贈り物としてのタイピン」で、通常のルースをはめたスタイルではなく、棒状のヒスイを金具に付けたスマートなタイプの品でした。

まず問題は金具、最近ではタイピンは需要が減少して金具自体が生産されなくなっています。
生産されているのもルースをはめ込む使い回せるタイプで、バリエーションがありません。(ルースのサイズが違うくらいの差しかない)
実際に見て金具を選んだ方が良いので、可能性のある知り合いに相談したところ、どうにか対応できる金具を見付ける事ができました。
もし金具が見付からなかったら、この依頼は断るしかなかったでしょう。(まとめて仕入れる必用がありましたが…)




と言う事で、オーダーメイドを開始。
まずは「予算に見合う素材(ヒスイ)」を、吟味するところから始まります。
全体が緑で透明度が高く光沢が際立つヒスイ、となれば「神緑」のヒスイしかありません。



このタイプはヒビが多いのが辛いところ(糸魚川のヒスイ全般に言えますが)、なるべく「無傷で長く切り出す事」に専念して、どうにか長さ34mmの棒状にしました。
透過光で浮き出る「僅かなヒビ」は削り落とす事を考え、最も発色の良い部分を表面にします。(少し暗めのヒスイなので、僅かでも明るい発色の側を表にします)


加工自体の難易度は高くありませんが、正確さは必須なので神経を使います。
最終的に金具の幅に合わせ、長さ34mm、幅4mm、厚さ3.3mmにしました、厚さはスマートに見えるギリギリの寸法にして、側面から透過光を楽しめる仕様にしました。





どうしても正面からは光が抜けず透明感が分かりづらくなりますが、それを際立つ光沢が補ってくれていると思います。

依頼者からも「もう少し透明度が欲しかったかな」と伝えられましたが、今の私の手持ちでは限界、予算も上げないとこれ以上は無理ですね…。
きっと金具の底に光を透す窓があったなら最高だったのでしょう、ヒスイ自体の透明度を増すと色が薄くなって底の金具が見えてしまいます。(厚さを薄くしても同じようになる)

それでも「メールで送られた画像通り」との事で満足して頂きました。
これで一安心、どうしても出来上がった状態を見て購入する訳ではないので、仕上がりの確認には不安が付きまといます。
職人さんは「毎度、この緊張感の中で仕事しているのだな」と思うと、私は作家で良かったと心底思います(笑)


なんであれ対応できて良かった〜、手ぶらでガッカリさせて帰らせたのでは「旅の思い出をカタチする場」を目指している意味がありません。
やはりあの場には「訪れる人たちの好奇心を凌駕する情熱を備えたプロ(本業)」が必用なのだと感じました。(訪れた際に「自分が嬉しくなるであろう場所」にする必用がある)

従業員の爺さんや婆さんのヒステリーを相手している場合ではないな(笑)、本気で出雲や燕三条にでも行こうかと思ったけど、出て行くべきは私じゃないですね。
作り手の理想郷にもなってくれたらと思って頑張ってきたのだから、これからも「訪れる人」や「訪れるであろう人」に向けて努力したいと思います。

先日(金曜日)にも物産センターを訪れたら(名刺を置きに訪れた)、連続でお客さんの対応をする事になりました。
タイミングが良かったのか、そういう日が今までにもあったのか解りませんが、担当が休みだった事もありヒスイの売場に店員がおらず、迷っているお客さんが数人いました。

誰に声をかけて良いのか遠慮している感じだったので、私から声をかけたら安心したように購入したい品の相談を始めました。
そう言う人たちは多いのだと思います、特に産地が気がかりなようで、ちゃんと説明すれば納得もしてくれます。
とにかく「ヒスイ自体の産地」と「誰が作ったのか」と「何処で作ったのか」が大事で、ヒスイ単体の産地が糸魚川であっても、糸魚川以外(市外)で作られた商品もあるし、日本国外で作られた商品もあります。
まずは「どこまでを求めているお客さんなのか」を認識する必用があり、人によって度合いが違うので、それに合わせて品を紹介するのが基本となります。

要望を突き詰めた結果、妥協して違う商品を購入する人もいるし、初志貫徹する人もいるし、人それぞれの選択をするので、求めている情報を伝えるのが販売の仕事と言えます。

ただ「それが出来る人」って意外に少ないのですよね…、だからヒスイの売店に入りたがらない店員が多いのだと思います。
これは勿体ない、本来は売る事のできる状態なのに十分に対応できていないのか…。
担当の他に対応できる店員を育てる必用があるのでしょうね…、希望を言えば業者が相対するのがベストですが、そこまでの努力をするだろうか?(業者の本気度にも温度差がある)

とにかく協力できる人とは協力して行き、この数年続くであろうコロナ渦を生き抜かなければなりません。

同士の皆さん、ご心配をかけましたが「期待できるであろう状態(存在)」に戻りました(笑)ので、引き続き応援をよろしくお願いします!

業者モドキ・店員モドキ・お客モドキには要注意、毒キノコと一緒です。(キノコでのモドキには可食もあるけどね(笑))
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