作者の思考

作品紹介

2015年07月07日

今回は、建速素戔鳴尊「雲蒸竜変」の伍作目を紹介します。

前回の天照や月読と同じヒスイを加工して、小サイズの素戔鳴を制作しました。
流れる雲を想わせる景色を映し、淡く翠に色づく姿は彩雲のようです。
特に目立つヒビや石目はありませんが、表面には多少の凹凸があります。




竜の鱗として見る事ができる表面の凹凸は、光の加減でキラキラと輝きます。
雪のような景色を映してもいるので、山岳の芽吹きも感じる事ができるかと思います。
猛々しい気性の素戔鳴ですが、柔らかな質感と色彩により柔軟さも感じさせます。





こちら側は、更に優しい翠に染まっています。
この淡く清涼感のある色彩は、夏の暑さをも忘れさせてくれるでしょう。
自由気ままに流れる雲(竜)は何者にも束縛されず、力を放つその時を待っています。





光を受けて輝く姿は、まさに彩雲の竜と言えるかと思います。
新緑〜深緑へと向かう草木の生命色を、その身に映しているかのようです。
これから本番を向かえる夏の日差しを受けて、より美しく輝く事でしょう。





これで天照・月読・素戔鳴の三貴子が揃いました!
そしてこの母石での神玉は、この素戔鳴が最後となります。(もう加工できる箇所が
ありません…)
残りは致命的な石目やヒビを避けながら、珠などに活用したいと思います。

今では珍しい明るい発色のヒスイだったので、そのヒスイで三貴子を作れて良かった
です。
糸魚川のヒスイで制作する事を限定しているので、なかなか望むヒスイとは出会えま
せん…。
でもそれが天運であり、それによって誕生するのだから、より高尚な領域を目指せる
わけですね。(そしてそれが、私自身の花道でもあるわけです)

こういう領域も在る事を残して行かなくては、知らずに成長してしまう人達が増える
事でしょう。
それではあまりに面白くない…、こういった基準も在って、それで成り立つ過程での
矛盾や葛藤も知ってもらえると嬉しく思います(笑)

でも知識として憶えるのと、経験して学ぶのでは大きな差があるので、特に同じ様な
生き方を目指す者に伝えて行けたらと思っています。
そうすれば、かつての先人たちのように心の支えと成れる事でしょう。(多分)



ちなみに二人の天才が存在していた時代に生まれたラファエロは、どんな心境だった
のだろうかと考える事があります。(以前にも書きましたが(笑))
王道から身を引き(って言うか引かざるを得なかった)、多くの民衆へ向けて芸術を
表現した心境は、どのようなものだったのだろうか…。(特にあの時代で)
その事で数多くの作品を残していますが、それら全てに満足していたのだろうか…?

古来より芸術を支えた存在とは王族や貴族であり、その間に画商がいたりします。
そして少数の娼婦の方々が、芸術家(特に画家)を支えたと言えるでしょう。(まぁ、
王族や貴族を支えたのが民衆なんですが…)
その支えを失っている現代では、理由は違いますがラファエロのような状態になって
いる芸術家が多いようにも思えます。(状況が「似ている」ってだけですが)

こういった時代での芸術家の生き方は…、と考えたりします。
二人の天才が同時にいた時代と、先人達の一流の作品が数多く残っている現代、細か
い状況は違いますが「表現を向ける対象が塞がっている」って事は同じですね…。

そうなるとラファエロがしたように、民衆へ向ける以外に道は無いのだろうか?
漫画やアニメは、その派生から生まれたのだろうか…、とか考えたりします。

どれが正解とかの話では無いのですが、選択できる項目を把握する事は大切だと考え
ます。

基本的に芸術とは高尚な領域を目指して行くので、関わる者は全て選別されていきま
す。
ですが選別で落とされたとしても、芸術を続ける事は可能です。(続けて行けば良い
のだから(笑))
要は「評価されないのでお金には成らない」、この問題を解決できれば続けられるわ
けですね…。

でも「評価されない事を続ける」って事自体にも選別があり、そこに残れるのは僅か
なのだろうと思います。(趣味のレベルに成っていても駄目ですので)
一度で良いから残ったその人に出会ってみたいなぁ…、きっと強烈で独特の美学を持
ち合わせている気がします。(ものスゲー頑固者なのでしょうね(笑))
そして出会えるのであれば、この日本で出会える事が理想的です。(言葉が通じます
し(笑))

私が北に向かって旅をする日も、近いかもしれません(笑)


幸いにもヒスイの領域は、誰が作ったか解らない「ただ古いだけの品々」が多く、グ
レードに左右される宝飾品〜装飾品しか選別されていません。
なので芸術として目指せる領域は、まだ多く残っているかと考えています。(日本に
おいてヒスイ文化が、途中で途切れているのが幸いしているのでしょう)

ただ表現を向ける対象が少なくなっているのは事実で、今後も減り続ける事は間違い
無いかと思っています。(自分のレベルに引き下げる事が平等なのだと、勘違いして
いる者が増えるので)

高尚さを維持しながらも時代に対応して行く、このバランスには糸魚川のヒスイ独自
の力を借りる必用があると考えています。
問題は「その力の恩恵を受けられるのか」で、そう簡単に受けられる領域ではないで
しょうね(笑)

でも、その一つの方法(選択肢)が在るのなら、そこへ向かって努力しようと思いま
す。
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